成長ホルモンを使った低身長治療「背を伸ばす医療」
成長ホルモンは、骨端線軟骨に働きかけ、長幹骨(大腿骨など)を伸ばします。第2次性徴が終了する頃、つまり、止まりゆく3年に相当する14~18歳で利用するのが効果的です。ところが、成長ホルモンには関節内の軟骨を成長させる働きもありますので、20歳を超えてもある程度、背をのばすことができます。足首、膝、股関節、そして椎間板のそれぞれを1~2mm増大させるだけで2~5cmぐらいは背が伸びるものです。また、血流中の胚細胞が骨端線部分に入り込み、軟骨細胞化するメカニズムも注目されています。
最近の研究では、背を伸ばす目的においては、成長ホルモンは、注射で投与するよりも、スパイク状の血中濃度上昇を作る成長ホルモンの舌下投与型スプレータイプのもののほうが良好な効果が期待できることがわかっています。医師の指導下で低身長治療に取り組みましょう。
※医師によって処方される成長ホルモンの舌下投与型スプレーは、承認されている医薬品を診療所内等で適正に調剤したものです。
背が伸びるのはナゼ?
生まれて4歳まで
4歳までは栄養状態の影響で背がぐんぐん伸びます。この頃は栄養状態だけが身長の伸びに影響します。
4歳から10歳まで
4歳~10歳前後まで年に5~6cmのペースで背が伸びていきます。この頃には、成長ホルモンと甲状腺ホルモンが重要な役割をします。年間の伸びが2~4cmのときは何か問題が潜んでいます。
※この頃に成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌が妨げられると背が伸びません。
10歳代になると・・・
10歳代になると、第2次性徴を迎え、「よく伸びる2年」が始まります。この頃は、成長ホルモンと性ホルモンが同時に分泌され始めます。よく伸びる2年では、男の子は年間平均で8~9cm、女のことは年間平均で7~8cmびます。2年間のうちの真ん中の1年は10cm以上伸びることもしばしばです。
「よく伸びる2年」に引き続く「止まりゆく3年」
性ホルモンの作用は、初期には身長を急速に伸ばしますが、後期には骨の成熟を促すため、身長の伸びを止めることになります。つまり、性ホルモンは「まず、身長のラストスパートをかけて、次にブレーキをかける」という役割を持つのです。止まりゆく3年においては、自己の成長ホルモンの分泌量が急低下してきます。
身長の伸びのブレーキがかかり、「止まりゆく3年」になったかどうかは、どうすればわかるのでしょうか?
第二次性徴の最終段階
毎月の身長を丁寧に測定するのです。子供の身長は朝高く、日中に1~1.5cmくらい低くなっていきますので、1か月に1回、一定時間に測定してください。それまで、1か月で6~8mmびていたのに、4mmくらいに低下して来たら、止まりゆく3年です。 なお、一般的には、男の子の声変わりが始まれば、もうすぐ「止まりゆく3年」に入ります。女の子の初潮が始まった時は、すでに「止まりゆく3年」に入って半年くらい過ぎています。背が伸びる過程はわかりました。では、背を伸ばすにはどうしたらいいのでしょうか?
背を伸ばすにはどうしたら・・・
「第2次性徴が始まる直前の背が低いかな」と思った時は、 アルギニンを利用すればいいでしょう。成長ホルモンの自己分泌がある人の場合は、この時期に成長ホルモンを投与してもあまり効果はありません。
「止まりゆく3年」になって背が低いかな、と思ったときは、成長ホルモンを利用するのがいいです。この場合、注射による成長ホルモン投与はいけません。生理現象と同様の血中濃度スパイクを作る成長ホルモンの舌下投与型スプレーが優れています。
成長ホルモンの舌下投与型スプレーを使いたい場合は、診察が必要になります。
では、すでに15~18歳になっていたらどうしたらいいのでしょうか?
すでに18歳になっていたら?
「止まりゆく3年」であるなら、成長ホルモン投与で背を伸ばすことができます。
では、背の伸びが完全に止まっていたら?
背の伸びが完全に止まってしまっていたら
ぐんぐんと伸ばすことは難しいです。止まってしまった後は、長管骨がぐんぐんと伸びることはありません。
止まってしまったけれども、どうしても諦められません。どうしたらいいのでしょうか?
それでも背を伸ばしたい!!
チャレンジするなら、成長ホルモンの舌下投与型スプレーにグルコサミン、コンドロイチン、プラセンタエキス、アミノ酸を併用してください。 第2次性徴終了後の18歳以上の方でも、この方法で伸びる人が出現します。
治療に取り組む場合は、医療機関での診察が必要になります。
私は「成長ホルモン」の処方を受けられるの?
大人になっても背は伸ばせるか!?
一般に骨端線が閉鎖したら、もう背は伸びないといわれています。しかし、実際の経験では、成長ホルモンの舌下投与型スプレーを利用して、20代以後の男性、女性でも、2cm以上伸ばせる人がそれなりに出現しています。どこが伸びているのでしょうか?メディカルサロンドクターは3つの仮説を立てています。
【仮説1】 椎間板や骨端の軟骨が成長する
宇宙飛行士が宇宙から帰ってくると、背が6~7cmぐらい伸びていることがあります。重力がなくなると、背骨の隙間や関節の隙間が伸びるのです。地球での生活に戻るとやがて縮みますが、それでももとの身長より2cmぐらい高いところで止まることがしばしばです。
成長ホルモンの舌下投与型スプレーを使うことによりこの効果が現れている可能性があります。
【仮説2】 骨全体に散在する骨芽細胞が反応する
骨端線には骨芽細胞が集族しています。骨端線が閉鎖するというのは、この骨芽細胞の集団が見られなくなるということですが、骨芽細胞そのものがなくなるのではありません。集団がなくなるだけで、骨芽細胞は骨全体に散在しています。骨折したりすると骨折面にこの骨芽細胞は大量に出現してきます。
骨全体に散在的に存在する骨芽細胞が、成長ホルモンの舌下投与型スプレーの利用により、反応が喚起されて、その結果、骨の本体が伸びているという可能性があります。
【仮説3】 幹細胞が分化する
流血中の幹細胞が、骨端線部分に導入され、そこで軟骨細胞へと分化し、骨端線を再形成し、細胞分裂増殖を行うようになる。
→この反応を誘導する手法は、我々の元で新たに研究中です。
背を伸ばす指導経験から
成長ホルモンの舌下投与型スプレーは、診療現場ですでに長い間にわたって大勢の人に利用されています。そのうち、特に伸長(背を伸ばす)目的での指導経験から明らかになっている項目をまとめました。
- 幼少時から小さい子供は、やはり小さいまま
小学性の頃に背の高い順で前のほうに並んでいた子供は、普通に生活していれば、青年期になってもほとんどは背が低いままです。「そのうち高くなりますよ」といわれるのは慰めにしか過ぎません。 - 第二次性徴前なら3cmくらい伸ばせる
「子供の背を伸ばしたいのです」といって来院する人のほとんどは、第二次性徴期が終了しているか、終了間近です。10歳代半ばから後半で「ここ1年で1cmぐらいしか伸びていません」という人がそれに該当します。終了間近の場合は、成長ホルモンの舌下投与型スプレーを利用した結果、伸びるのは3cmぐらいです。この3cmでもずいぶんと喜ばれるものです。すでに第2時性徴期が終了している場合は、ほとんど伸びないか、やっと1~2cm伸ばせるぐらいです。 - 小中学生への成長ホルモン投与
自己体内の成長ホルモンに、まだ十分な分泌余力がある年齢の場合は、成長ホルモンの投与は慎重になります。週に1~3日だけを午前から夕方にさっと投与する手法から始めます。最前列に並んでいた子供が、徐々に後ろのほうになることもしばしばです。その子が第二次成長期を迎えたときにどうなるかについては、まだ十分な経験はありません。 - もともと長身の子供の方が背が伸びやすい
16~18歳ぐらいで、身長170cm以上の子でさらに背を伸ばしたい、という人もよく来院します。「スポーツ選手になりたいから」という理由が大半です。もともと背が高くなっている子は成長ホルモンに対する反応性もよく、よく伸びます。もともと低い子が成長ホルモンへの反応が鈍くて数cm伸ばすのに苦労するのとは実に対照的です。 - 50歳前後の人が2、3cm伸びるのは?
容姿、体力、意欲の回復目的で成長ホルモンを利用する人も大勢います。そのような人たちはしばしば2~3cmくらい背が伸びます。加齢にともない縮んだ分が元に戻ったという感じです。それにともない、腰痛がなくなった人もいます。背骨の椎間板が膨らむ効果があると思われます。 - 30歳を超えても伸びる人がいる
30歳でもまだ背が伸びているという人がいます。骨端軟骨云々という理屈では理解できない伸長メカニズムもあるのでしょう。 - 20歳代での伸長効果
20歳代でも背が伸びる人はいます。ただし、投与した成長ホルモンに反応して背が伸びるかどうかの事前予想は困難です。 - 学校の成績が良くなることがある
成長ホルモンの舌下投与型スプレーで伸長チャレンジ中に「記憶力がよくなって学校の成績がよくなった」と言ってくる子供がいます。高齢者の物忘れを改善する効果もありますので、成長ホルモンには、脳内のシナプスネットワークに働きかけて、記憶力を高める働きがあるのでしょう。